短関節筋と二関節筋ってどんな筋肉?
どんな働きをしているの?
こんな疑問にお答えします。
この記事の内容
・単関節筋と多関節筋の違いを理解する
・単関節筋と多関節筋、それぞれの役割
・主な単関節筋と多関節筋の働きを解説
この記事の信頼性
この記事を書いている僕は、トレーニング歴25年、ジムトレーニング経験13年、パーソナルトレーナー歴6年ほど。
筋力トレーニングをやっていると、自分のからだのことに興味がわいてくると思います。逆に自分の体、あるいは筋肉に興味があるから筋トレをしているという方もいると思います。
また、スポーツでパフォーマンスを上げるために体の基礎作りとして筋トレをされていることもあるでしょう。
いずれにしても、筋トレに興味を持ち、どんなトレーニングをすると筋肉がついて筋力アップするのか、効果的なトレーニング方法はどうすればいいかと考えた場合には、からだや筋肉への知識も高めておくことで、今より効果的なトレーニング方法を見つける手助けとなります。
単関節筋(たんかんせつきん)と二関節筋(にかんせつきん)とは?
足や手などを動かすには筋肉を使う必要があり、これらの動きは自分で意識的に行うことができます。
関節を意識的に動かすことのできる筋肉を骨格筋(こっかくきん)と呼びます。
骨格筋は、体を動かす時だけでなく、立っているだけ、座っているだけでも姿勢を保つために使われています。
骨格筋には、かならず起始と停止があります。(筋肉がどこから始まりどこで終っているかということ)
筋肉が一つまたは二の関節をまたいで骨と骨についていることで、筋肉が収縮すると筋肉の起始と停止が近づくことで関節が動き、腕の曲げ伸ばし、歩く、走るなどの色々な動作をおこなうことができます。
筋肉の起始と停止をより詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
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単関節筋(たんかんせつきん)とは?
単関節筋とは、隣り合わせになっている骨と骨をつないでいる筋肉で、一つの関節に作用します。
単関節運動や関節の安定性を保つときに優位に働く筋肉です。
単関節運動と多関節運動についてはこちらで解説しています。
二関節筋(にかんせつきん)とは
二つの関節をまたいでついている筋肉で、二つの関節に作用します。
多関節運動などで大きな力を出す時などに活動しやすい。
多関節筋とは
数は少ないですが、関節を三つ以上またいでいる筋肉もあり、二つ以上の関節をまたいでいれば、多関節筋(たかんせつきん)になります。手や足の深部の筋肉にみられます。
この定義からして、二関節筋も多関節筋に含まれます。
単関節筋と多関節筋の筋肉をみてみよう
それでは、単関節筋と多関節筋に分けて解説します。
単関節筋の筋肉
単関節筋はどんな筋肉があるの?
上腕筋(じょうわんきん)
起始:上腕骨
停止:尺骨
作用:肘の屈曲(肘を曲げる)
上腕筋は、上腕二頭筋と一緒に働いて肘を曲げる作用があります。
上腕三頭筋 外側頭(じょうわんさんとうきんがいそくとう)、内側頭(ないそくとう)
上腕三頭筋は、3つの筋肉の塊が集まって出来ていますが、そのうち2つ(外側頭と内側頭)は単関節筋です。
起始:上腕骨
停止:肘頭(尺骨)
作用:肘の伸展(肘を伸ばす)
続いて、骨盤と下肢の筋肉です。
梨状筋(りじょうきん)
起始:仙骨
停止:大腿骨の大転子
作用:股関節の外旋(外側に捻る動き)
梨状筋は股関節を安定する役割に大きく関わっています。また、この筋肉が硬くなると坐骨神経を圧迫して下肢に痺れが出ることもあります(梨状筋症候群)ので、筋トレしたあとはケアを十分にしてくださいね。
大腿二頭筋短頭(だいたいにとうきんたんとう)
起始:大腿骨の粗線
停止:腓骨頭
作用:膝の屈曲
ハムストリングの中で大腿二頭筋短頭だけが単関節筋になります。
ヒラメ筋
起始:腓骨、脛骨
停止:アキレス腱〜踵骨
作用:足関節の底屈(足首を下に伸ばす)
ヒラメ筋は腓腹筋と合わさって下腿三頭筋を構成していますが、腓腹筋は多関節筋になります。
ヒラメ筋は足首の硬さや足関節の安定性に深く関わってる筋肉です。
シーテッドカーフレイズでヒラメ筋に集中した筋トレが可能です。
ローテーターカフ(肩のインナーマッスル)
肩関節のインナーマッスルとして知られる、ローテーターカフも単関節筋です。
ローテーターカフの種類
・棘上筋(きょくじょうきん)
・棘下筋(きょくかきん)
・小円筋(しょうえんきん)
・肩甲下筋(けんこうかきん)
起始と停止は、
・棘上筋
起始:棘上窩
停止:上腕骨大結節
作用:肩関節の外転、外旋
・棘下筋
起始:棘下窩
停止:上腕骨大結節
作用:肩関節の外旋
・小円筋
起始:肩甲骨の外側縁
停止:上腕骨大結節
作用:肩関節の外旋、水平外転
・肩甲下筋
起始:肩甲骨窩下
停止:上腕骨小結節
作用:肩関節の内旋
この4つの筋肉は、上腕骨と肩甲骨の軸を保ち、安定性を高める働きをしています。
肩のインナーマッスルトレーニングは、野球選手がよくチューブを使ってやってる所を見たことがあるかと思います。
また、肩を怪我した後のリハビリには、必須のトレーニングです。
二関節筋、多関節筋の筋肉
筋トレでも鍛えることの多い、主な二関節筋と多関節筋の筋肉を見ていきましょう。
それでは、腕の筋肉から
上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)
上腕二頭筋は長頭(ちょうと)と短頭(たんとう)の二つを持ち合わせています。
起始:
長頭;肩甲骨の関節上結節(かんせつじょうけっせつ)
短頭;肩甲骨の烏口突起(うことっき)
停止:橈骨粗面
作用:肘の屈曲、前腕の回外(腕を外側に回す)
上腕二頭筋は肘を曲げる働きはもちろんですが、前腕を外側に回す(回外)働きもあるので、筋トレでダンベルカールをやるときには前腕の回外を意識すると力の入り方に変化がでるので、意識してやってみてください。
上腕三頭筋長頭(じょうわんさんとうきんちょうとう)
起始:肩甲骨の関節下結節(かんせつかけっせつ)
停止:肘頭(尺骨)
作用:肘の伸展(伸ばす)
上腕三頭筋のうち、長頭筋だけが二関節筋になります。
下肢も見ていきましょう。
ハムストリング
ハムストリングスは、大腿部の裏側にある筋肉で内側と外側にわけられます。
内側ハムストリングス⇒半腱様筋と半膜様筋
外側ハムストリングス⇒大腿二頭筋
半腱様筋(はんけんようきん)
起始:坐骨結節
停止:脛骨
作用:膝の屈曲、下腿の内旋
半膜様筋(はんまくようきん)
起始:坐骨結節
停止:脛骨
作用:膝の屈曲、下腿の内旋
大腿二頭筋長頭(だいたいにとうきんちょうとう)
起始:坐骨結節
停止:腓骨頭
作用:膝の屈曲、脛骨の外旋
短頭(たんとう)と長頭(ちょうとう)の二つの筋頭がありますが、長頭筋は多関節筋ですが、短頭は単関節筋になります。
ハムストリング全体で股関節の伸展の働きもあります。
筋トレでは、デッドリフトやスクワットで活動的に使われます。
内側ハムストリングと外側ハムストリングを意識的にトレーニングしたい場合は、レッグカールで下腿を少し外旋(外側に回す)してトレーニングすると外側ハムストリング(大腿二頭筋)に刺激が入り、
やや内旋(内側に回す)してレッグカールをやると内側ハムストリング(半腱様筋と半膜様筋)に刺激が入りやすくなります。
弱い部位を意識的に鍛えるためにはこんなちょっとしたテクニックも必要になります。
腓腹筋(ひふくきん)
腓腹筋は、ふくらはぎをつくっている大事な筋肉で内側頭と外側頭にわかれます。
起始
内側頭;大腿骨の内側上顆
外側頭;大腿骨の外側上顆
停止:アキレス腱〜踵骨
作用:足関節の底屈
下腿三頭筋は大腿骨の下部から始まり、アキレス腱になって踵の骨で停止しています。下腿骨をまたいで、踵までついているので二関節筋になります。
ふくらはぎをつくっている筋肉は、この他に先ほどのヒラメ筋がありますが、こちらは下腿骨から始まり、踵骨で停止しています。隣の骨同士をつないでいるためヒラメ筋は単関節筋になります。
筋トレで、スタンディングカーフレイズの場合には下腿三頭筋全てを鍛えられますが、シーテッドカーフレイズでは膝を曲げての運動になるので、単関節筋であるヒラメ筋を優位に鍛えることができます。
的を絞ってトレーニングする場合には、こうした筋肉のつき方を覚える必要がありますが、筋トレ初心者のうちはそこまでこだわらなくて大丈夫ですよ。
単関節筋と二関節筋の力の使われ方をみると、ジャンプ動作やランニング、投球動作など大きな力をだす時には、複数の関節が使われて一つの動作として力が発揮されますので、二関節筋が優位に使われやすい傾向があります。
一方、単関節筋は、もちろん関節を動かす働きをしますが、関節を安定させる役目を持つ筋肉が多く見られます。
特に肩のインナーマッスルを見てみるとわかりやすいと思います。
棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)が肩関節を支えるインナーマッスルですが、肩関節部分を円を描くように覆っていて、肩を動かしても腕の骨(上腕骨)の軸がずれないようにする働きをしています。
もし、関節のずれが起きたまま肩を使ったトレーニング(ショルダープレやベンチプレス、ラットプルダウンなど)を続けていると関節のずれにより、あちこちに摩擦や衝突(インピンジメント)が起こることで痛みやひっかかりを伴うようこともあります。
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単関節筋と二関節筋でトレーニングの選択が変わる
筋トレ初心者はもとより、スポーツの筋力アップやダイナミックな動きを目指したトレーニングをする場合には、複数の関節をつかったトレーニングで多関節筋を多く取りいれて行い、部分的な筋力強化や関節の安定性を高める場合には単関節筋に集中して行い、深部筋の筋力強化や筋肉の意識づけには、スロートレーニングやアイソメトリックトレーニングが選択肢になると思います。
まとめ
単関節筋と二関節筋は、筋肉の起始と停止がとなり合わせの骨をつないでいるか、関節をまたいでついているかで分類される。
二関節筋は大きな動きや複数の関節が使われる動作で使われやすい。短関節筋は力を発揮する動作にも使われるが、関節を安定する役割もある。
筋力トレーニングの目的に応じて、単関節筋と二関節筋を使い分けることもトレーニングの選択肢の一つになる。
今回はここまで。